吉夢通信
霜月によせて・・・・。
日毎に寒気加わる時節となり、
庭の山茶花の花も、つぼみが一輪づつ咲き始めました。
毎年この時期になると書いてしまいますが、
今年もあっという間に、一年が過ぎようとしております。
年を重ねるごとに、越し方を感慨深く感じるようになり、
そうなれば、一年の総括、反省とでも申しましょうか・・・。
旅館業は様々な方との出会い、ご縁の中で日々が過ぎて行き、
私は何事においても、
「まあこの辺で良いか!!」と思えず、
そういう考えは、現状維持どころか、後退につながると感じておりました。
ネットの口コミに、アンケートに・・・・。
ひとつひとつ拾い上げ、日々心の中で真っ向勝負していては、
生身の身体はもつわけがなく、
いままでのように、想いに、身体がついていかず、
あらあらどうしてしまったのでしょう!?と、いう毎日を、
くぐり抜けて来た一年でもありました。
そのような中でも、否そのような状況だからこそ、
折々にいただく優しい言葉が、痛んだ傷口にしみ入るように、
私を癒し、救ってくださいました。
聖路加国際病院副院長で、40年余、
小児がんを患う子どもたちの人生を見守り、見届けてきた、
小児科医、細谷亮太先生の仕事観等々のインタビュー記事が目にとまり、
ある患者さんと話す機会があり、
その方は知的障害があり、作業所にお勤めの青年で、
「作業所は面白い?」と聞いたら、
「面白くない」と答え、聞いてみれば、
日頃先生もお使いの日用品で、
「面白くなくても、誰かがやらないといけない仕事だし、
君が仕事してくれて、先生はとても助かっているよ。ありがとう。」
そして、いま与えられている仕事の意味や関係を、
深く考えると、さまざまな人が働いてくれているおかげで、
ぼくたちの生活は成り立っていることに気づかされると。
そうなれば、いつも行くお魚屋さんに、
「おかげさまでおいしいお魚がたべられてます」と伝えたくなる。
日ごろから仕事する者同士、
感謝し合って心配りを忘れてはいけないとも。
コンビニやレストランで店員さんに、
あれがダメだの、これがヘタだの文句言ってたら、
人は育たないし、そういう人は仕事の尊さをわかっていないと。
「見習い」の札を付けていれば、
「大変だね。ご苦労さま」って、
労いの言葉を一つくらいかけてあげたっていいじゃない。
少々料理が出るのが遅くたって、レジ打ちがヘタだって、
死ぬわけじゃないんだから。
気を使いながら、相手のことを慮る日本の精神文化の後退、
そういう世の中になっちゃったのは、
なんだか寂しいよね。と、インタビューに答えていらっしゃいました。
私も日ごろから思うところあり、
うなずきながら、読ませていただきました。
吉夢も、まだ高校を出て直ぐ、また数年の子たちには、
一本立ち出来るようになるまで、あまりの無礼は論外ですが、
少し待ち、少し許して見守ってやる、
私自身が育てていただいたように、彼女達にも、
少しの時間をあげたいと常々考えております。
お許しいただけるならば、
旅人のコートを脱がす太陽のように、
明るく暖かく周りを包み込むことの出来る、
私自身から、そういう者でありたいと、祈る今日この頃でございます。
今日もやっぱり、反省とそしてそれから大きな感謝!!
つまずくことも、転ぶことも、だまされることも、裏切られることも、
決してそれ自身嬉しいことではないし、
自ら望むべきことではありません。
しかしながら、どうしようもなく、
それらが【来る】時、
そういうマイナスの要素からさえ、
プラスの要素を掴みとることが人間にはできるのです。
・・・・・・この世の中に無駄なものは一つもありません。
苦しみを避けることなく、むしろ与えられる苦しみに、
ふさわしい者であることを願いながら、
謙虚に生きてゆきたいと思います。
(ノートルダム清心女子大学名誉学長 sr渡辺 和子女史)