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吉夢通信

吉夢通信

時雨月によせて・・・。

2016年10月27日
posted by 吉夢 女将

朝晩めっきり寒くなり、布団の中が恋しい季節となりました。

  

吉夢のルームさん(客室係)は、バイキングの当番になりますと、

早朝6時までには出社して、朝食の用意、仕度にはいります。

前日遅い宴会ともなれば、寝る時間を割いて、眠い身体を奮い起して、

お迎えの車に飛び乗ります。

私も、30数年前、嫁に入った頃は、フロント会計の仕事が主でしたので、

社員さん達と、同じ寮に住み、特に寒い季節は寝坊しないように・・、

若さで何でも頑張れた時でした。

  

起る出来事に何も無駄は無いと教えられてきましたが、

まったくその通りだと、今思い返してみても、そのように申し上げられます。

その時辛いと思える事は、楽しかった事よりも、良き思い出となり、

更に自分がステップアップ出来ましたし、

現在の自分に大切な経験だったと申せます。

  

当時、事務所に貼ってありました日蓮聖人の聖語、

「 艱難 汝を玉にす 」

若さだけで、でこぼこだらけの私も、

色々な経験でいつか玉のような心に慣れると、

只々、愚直な程、真っ直ぐな気持ちだけで、やっておりました。

当初、次男に嫁ぎました私は、

家族の中で少しでもお役に立てれば良いと、

それが私の役目だと、日々思い仕事をしてきましたので、

まさか主人とホテルの要になろうとは、

当時つゆほども思った事はございませんでした。

現在のように人も居りませんでしたので、

朝の会計、日計表を出しますと、

下に下りて、家族の食事の仕度、社員さん60名の賄い作り、

そうこうしてますと、お昼の会計業務、終わりますと家族のお昼、

3時となり、お客さまのお迎えが始まります。

売店、宴会の時間になりますと、宴会場のスリッパを整え、夕食、

二次会の乾き物のオードブルやおにぎり作り、

一日は、あっという間に過ぎて行きました。

    

それが今の私の、働いて下さる社員さんへの思いや、大きな感謝につながっており、

分からないなりに、出来ないなりに、無我夢中で働いた時期でした。

『 若いうちの苦労は 買ってでもしろ 』

生家の兄に背中を押されて杉並より小湊へ嫁ぎましたが、

本当に若い時は、頑張れるものですし、それが時期が来ると良い堆肥になり、

熟成されて行きます。

良く社長の母には、「 私の仕事を見てください! 」と、

言える様な働きをする様、事あるごとに教えて頂きました。

  

社長も、現地に居る時はフル回転で、朝は社員さんの送迎から、

夜は宴会場のご挨拶、海女芸者さんの勝浦までの送りやクラブを助け、

一日中走り回っておりました。

一週間おきに、一営業マンとして、

長野、神奈川、静岡と、営業セールスに廻り、

年に春、秋2回、当時社長の母を乗せて、東北を1週間かけて、

グルリと営業に廻り、今思えば仕事をしながら、

親孝行もさせて貰えたと、思い出しては、話しております。

  

今月は、なにやら私の日本昔話になってしまい、お許し下さい!

そのような若い時があり、今現在に結びついていることが、

無駄では無かったと、しみじみ思える年になりました。

それは、私達に限らず、どこのお宿の経営者の方々も、

似たり寄ったりの経験をされていると思われますし、

多種の自営業の家も、皆さん同じ思いをされていると存じます。

  

館内は、観光シーズンの10月らしく、団体のお客さまが多くおみえで、

有り難い事に各地からバスで、お越しいただいております。

  

今、背高泡立草が勢い良く、野原や路地を黄色に染め、

コスモスが風に吹かれて揺れる中、今日も大自然の営みに生かされ、深い感謝!!

  

【 われは草なり 】

 

われは草なり 伸びんとす

伸びられるとき 伸びんとす

伸びられる日は 伸びるなり

われは草なり 緑なり

全身すべて 緑なり

毎年変わらず 緑なり

緑のおのれに あきぬなり

われは草なり 緑なり

緑の深きを 願うなり

ああ 生きる日の 美しき

ああ 生きる日の 楽しさよ

われは草なり 生きんとす

草の命を 生きんとす

                                                          [ 高見 順   作 ]